最近の話でX68ってどういうことだとタイトルに突っ込みたくなりましたが昔のお話。自分で購入したパソコンはどれも記憶には残っていますが、特に感慨深いマシンは任天堂ファミリーベーシック(V2)、アップル・マッキントッシュSE30、それからシャープX68000XVIなんかがあげられます。
おい、ファミリーベーシック(しかもV2)ってファミコンの周辺機器だろ、あれをパソコンの分類にいれるか、と突っ込みたくなる人もいるでしょう。でも自分的にはあれがコンピュータらしい最初のマシンだったのです。あれのベーシックで得た知識、考え方で高校の情報処理で優・良・可・不可の優の評価を得ていました。また自分の最初のコンピュータ演奏機でした(楽器自身は父のアコーディオンが先になります)。
続いて高校時代、FM-77AVやらPC88FHやらなんかを友達から二束三文で売ってもらってパソコンとコンピュータ音楽について色々学びました。当時愛読していた電波新聞社のマイコンベーシックマガジンを少ない小遣いで買っていて、YK2ってどんな人なんだろう、と思ったものです。YK2と古代祐三氏が同一人物だと知らなくて、スキームを聞いた時には、この音ってサウンドボード2なんだよな、こんな音出せる人がいるなんて、すげー人間がたくさんいるんだなーと思ったのは笑える過去です。PC88FHではSSGにソフトエンベロープ(ソフトによる波形変化。あのころは売り物のファミコンゲームでさえきちんと行われていないものも珍しくありませんでした)をかけられたり、チャンネル単位でデチューン重ね(周波数をずらして発音を重ねることで、音に厚みをつけるFM音源時代の古いテクニック)することが出来るシーケンサがあり、ハードは誰でも公平に与えられる土壌であり、演じるソフトが重要なのだ、と思ったものです。
社会に出てから仕事で多忙になり、プロジェクト成金って言葉を体験し、使う時間がなくてちょっとした小金持ちになったので、音楽専用マシンが欲しいと情報を集めました。ゲーム会社には音楽作曲の専属チームもおり、お話を聞き、音楽ならマックだよという情報を得て、秋葉原で即金で(音源やシーケンサも込みで60万後半くらい)購入してきました。おー金持ちー、と思ったものです。
ですが残念なことに、確かに音楽はマックだったかもしれません。雑誌評価で3位の人気をえている人気高い1万円超えするピアノロールのシーケンサは、音楽を演奏する目的はクリア出来ても、音源をいじくることが不得手なシーケンサでした。外部音源の初期設定等を行うべきエクスクルーシブメッセージに大したサポートがなく、そして曲データに記録されないってどんな仕様だよと思いました。
今振り返るに、FM77AVのBASICのMMLの方が音源をコントロールできてたんじゃないかと思います。明らかに強いのはピアノロールだけです。その不得手な面が雑誌に全く出ておらず、マックを勧めてくれたサウンドチームの人にも、どうやればいいのか聞いたら「え?さあ?」と悲しい返答が帰ってきました。その頃、自分と同期のサウンドチーム所属に人間(2名)はギターやピアノを主軸に作曲は良評価されるべきでしたがパソコンは不慣れて、ゲーム音楽とはいえ作曲するのにコンピュータなんか使わなくても出来る、と愚痴っていたこともあり、ああ、音楽屋さんはコンピュータに強いとは限らない、むしろ当時の私からみても、へっぽこの可能性があると評価を改めました。
購入後2か月くらい、シムアントを楽しみ、あとライフ&デスで盲腸の患者を何人も殺し、あ、だめだこりゃ、とマシンに見切りをつけ、3か月になる前に、中古品で30万で知り合いに買い取って貰いました。今思っても勿体無い話だと思います。高いものを買う時は他人の評価よりも、自分がしたいことを出来ることを確認してから買うべきだ、と勉強代として高いお金を出しました。
で。今一度、自分がやりたいことを実現できそうな良いマシンないかなと吟味してマイコンベーシックマガジン上の最強マシンとばかりの評価を得ていたシャープ・X68000に興味をもちました。30万で買える。グラディウスはあまりやりこんでいない私からみて、オプションが4個つけられるという時点で、そっくりにみえました。その頃知り合った同僚のソフト開発の人間に、彼が私物で所有しているX68はどんなマシンなのか聞いたら、出来ることは少ない、でもやろうと思えば何でも出来る、というある意味当たり前の、少し意味不明な解答を頂きました。
どういうこと?と聞くと、X68の市場自体は小さく、残念なマシンではある、しかしユーザーに活気があって、自分たちでソフトを作って公開している、という話でした。いやいや自分たちでソフト作ってって、フリーソフトってこと? それってどう評価しても残念なマシンじゃないの?と私は問いました。その返答に、音楽といえばこんなツールがあるよと、ADPCMを8音ならすというソフトを出してきました。X68ユーザーだったら知っていても当然という有名なソフトでした。ハード的には1チャンネルしかないADPCMをソフト的に8チャンネルにふやす。いやいや増やすって簡単にいっても、1つのチャンネルの音を切り替えることはゲーム的には普通です。しかしその場合、長い音が切り替えで切れてしまうのです。しかしこのソフトは確かに聞いたとおり音、特にドラムパートには複数の発音がされているようであり、音を切り替えているような不自然さはありません。
何これ、と質問を返してしまったのを覚えています。そして「あれ、ひょっとしてこれって、同じ68000のメガドライブでも出来る?そのまんまじゃ動かないだろうけど、移植したりして」と聞いたんですが、彼は僕が作ったソフトじゃないから、正直わからない、でも魅力的だよね、と言葉濁していました。
それでX68000XVIを購入。ZMUSICというMMLでも普通に外部周辺機器へのアクセスは出来ましたが、RCD+STed2というステップ入力シーケンサに目をつけました。元はPC98で有名だったカモンミュージックを参考に、拡張させたようなソフトだったようです。正直MMLより高度なソフトを堪能したいと思ってしまったのです。本家のカモンミュージック自体を触った時には、残念感があったので、RCD+Sted2のプログラマ・TURBO氏はX68のシーケンサー開発に、頑張っちゃった人だったのでしょう。高機能で、そして細かい所に手が届く素晴らしいシーケンサでした。ステップ入力型シーケンサにマウス使うとは思いもしませんでした(ピッチや音量など連続にパラメータ変更する際、どういう変化になるかマウスによる図形入力が出来たのです)。TURBO氏の他界の知らせを聞いた時、全く関係なかったのに衝撃を受けたほどです。
当時私のX68000へのはまり具合は狂信的だったと言えるかもしれません。本当に、出来るとは少なく、そして出来ることは多かったという日本語おかしな状況でした。市場縮小による新機種が出ない事の性能不足は高速化改造で対応し、改造しちゃってるので故障も自分で治すという、休みの日に会社の工房にX68持ち込んでいた姿が見受けられていました。今では随分前にシャープはX68市場を撤退しています。ウインドウズマシンは役には立ちますが今の私にとってそれほど魅力的という訳ではありません。ウインドウズ用のX68エミュレータも複数見受けられますが、あの時の情熱が蘇るようなマシンに出会えないものか、と思っています。
尚、私の名前の68KというのはX68000に関係していない訳ではありませんが、自分が一番最初に設計したハード(売り物ではなく、ただ自分が1から設計したというだけ)のCPUが68000だったのでそこからとっています。当時ことあるごとに出てくるZ80より深い印象をもっているのです。でもX68000は大好きなマシンだったので、それに関係する名前をつけている人をみかけたら、反応しちゃいます。今シャープが当時の思いをもったマシンを出したら、と夢物語を思い浮かべるのです。
あ、セガがドリームキャスト以降の新家庭用ゲーム機を作るって夢物語も期待しています。